だれが、どんな風に育てた野菜なのか。
普段そんなことを気にしながら野菜を買うことがありますか?

野菜って、スーパーで値段を見比べながら、その日のおかずの献立を考えながら買うもの、でした。
私たちも。

私たちの農園は、夫の雄人が大学院に通いながら始めました。
農山村をフィールドにした、社会科学の研究のためでした。
私は、夫が作る野菜を食べて初めて、野菜の本当の美味しさに出会ったと思っています。
当時は、農業には全くの素人の夫でしたから、見よう見まねで畑を耕し、種を蒔き、世話をして収穫をしたように記憶しています。それでも、土から採れたばかりの野菜のなんと美味しかったことか。

その美味しさが、私たちの農業の原点です。

それから、本格的に農業がしたいと夫が有機農家に弟子入りし、3年の研修を経て、その間私は地域の直売所で働き、その後自分たちで借りた地域の農地でJAS有機認証を取得して独立しました。

私たちの農地は、京都市の北東にある大原という地域にあります。
小さな農山村ですが、美しい庭を持つ寺院や昔からの棚田があり、山水の豊かな場所です。そこに畑を借りて、京野菜と呼ばれる品種を中心にすべての野菜を農薬や化学肥料を使わずに有機栽培しています。

季節をとわず朝露が降り、夏は十分暑くなり、冬は厳しい寒さがあります。
棚田の土は深く柔らかです。
そこに、鶏糞や油かす、魚かすなどといった、野菜を元気に美味しく育てる肥料をいれていきます。
これが夫の腕の見せ所で、野菜が欲しがるタイミングで、美味しくなれる肥料を選んで入れる。なかなかの経験と技術が必要となります。うまくいけば、野菜はぐんぐん味よく育ち、土はますますホカホカとしてきます。

時々土から出てくるミミズは踊っているようです。
蜂は、いつでも蜜や虫を求めて飛び交っています。
季節ごとに色を変えるのは植物だけではありません。カエルやカマキリも体の色を変え、忙しそうに野菜の間をうろうろとしています。

畑で虫や動物に出会う時、それがたとえ野菜を食い荒らす奴だったとしても、まずは嬉しくなります。やや、いるな、という気持ちになります。それから取り除くか、がんばれよと放置するかは虫や動物によって変わってくるのですが、自分たちのいる場所に、虫や動物がいてくれるといつも喜びを感じるのは、それを私たちが「豊かだなあ」と思っているからでしょうか。
もし畑から彼らがいなくなったら。たとえ野菜がわさわさできていても、ずいぶん味気ないことでしょう。
それくらい、畑にいる命にいつも励まされているのです。

そして今。
私たちは大切な仲間と日々の農作業をしています。
出会いの縁が重なり、私たちと一緒に働いてくれることになったこのスタッフたちが、今のつくだ農園の大きな駆動力となっています。

彼らと毎日笑いながら、けれども真剣に畑に向かっています。
暑さや寒さ、雨や風にさらされながらする農作業です。
でも「あついね、さむいね」と言いながら作業できることの楽しさ。嬉しさ。
スタッフがいてくれて、ほんとうにありがたいと思っています。

冒頭の話に戻れば、だれがこの野菜を作っているのか、という問いに、このような私たちです、と答えたくてこの文章を書きました。

有機野菜であるとか京野菜であるといった特徴を持つ野菜は、たくさんあることでしょう。
それに加えて、私たちはこのように野菜をつくっています。こんな風に、 野菜が美味しく育つように心を砕き 、畑の命を慈しみ、日々仲間と笑いながら楽しく野菜を作っていますということを伝えたくて書きました。

私たちの野菜をもしかしたら食べてみようかなとお考えの時には、今の話を少し思い出して、そして安心して購入していただければと思います。

ヴィレッジトラスト つくだ農園
渡辺雄人 渡辺民

渡辺 雄人(わたなべゆうと) ヴィレッジトラスト つくだ農園 代表

1982年生まれ。岐阜県大垣市出身。同志社大学大学院博士課程終了。2006年から農業を始める。もともとアウトドアでの活動が大好きで、農業もその一つのような気持ちでスタートした。2007年から「京都太秦長澤農園」の長澤源一氏に師事し、有機農業を学ぶ。2009年に独立し有機JAS認証を取得。以来毎年認証の更新を続けている。2017年から同志社大学大学院総合政策科学研究科にて講義「有機農業研究」の講師をつとめている。
好きな野菜は金時人参。

渡辺 民(わたなべたみ) 農作業・加工・ウェブサイト担当

1982年生まれ。京都市左京区出身。同志社大学大学院修士課程修了。大学院卒業後、直売所「里の駅大原」に3年間勤務後退職。2013年からはつくだ農園で、農作業やホームページの作成を担当。2015年には自宅に加工場を併設し、農産加工品の生産にも従事する。
好きな野菜は芋類。